強豪相手に引き分けたい――パク・ミンギュ『三美スーパースターズ最後のファンクラブ』

朝五時に起きる。身支度をして、六時には家を出て、六時十三分発の電車に乗って通勤途中で資格の勉強。七時にいつもの喫茶店に入って半熟目玉焼きのモーニングとアイスコーヒーを注文する。今日のノルマが終わるまで喫茶店でも勉強。終わったらモーニングを…

短編「下書き保存」

宮本君。「言葉は自分じゃなく他者の為にあるんだよ。人生は他者だ。だから辛い時は誰かに宛てた文を書くと気持ちが落ち着くんだ」とか、確かなんかそんな感じのことを言っていましたね。それで、君が辛い時、実際に私に何度もメールを寄こしましたね。それ…

短編「ライティング」

LとRの発音の違いすら分からないまま高校生になってしまった。 例えば「write」と「light」、私にとってはどちらもただ「ライト」なんだけれど、ネイティブのスティーブ先生に言わせればこれはどうも違うらしく、無理やり日本語カタカナ表記に押し込めるな…

物語は溶ける『魔女の子供はやってこない』

物語は溶ける。 僕が受容する時、それは文字の連なりであったりシーンの繋がりであったり音のかたまりであったりする。ひとつの連なりとして、物語は僕の中に入ってくる。 でも、時が経つと、物語はするするとほどけていく。断片になる。 金曜日の朝、人事に…

楽しいこと

昨日の夜、11時まで友人と喫茶店で話して別れた。 帰りの各駅停車の電車の中、充電の切れたスマートフォンを両手で握り締めながら、どこにも繋がっていない自分自身を感じていた。 ここ二、三週間、本が、特に小説が読めなくなっていて困っている。 僕にと…

これまでのこと

とにかく「自分には才能がない」と思い続ける日々だ。 僕は大阪で働き始めて二年目で、もうすぐ三年目になる。 もともと根っからの文系で中高大と文化系の部活・サークルにしか所属してこなかった人間だけれども、体育会系が多いと言われる金融関係の会社で…